3月1日

雨。

昨日は晴れ。


山腹にかかる雲が荒々しい格好で山肌を縫っていく。白の背景に白の雲、フッと輪郭が現れて切れ目はぼんやりと薄黒く、日本画の墨絵のよう。春草のまとまった展示が、また見たくなりました。

そんな風景は、いつでもそこにあったのだけれど、その絵を見て初めて、描かれたように風景が目の前にあったことに気づく。マティスの色を初めて見たときの感動は、そのままはもう忘れてるけど、秋の山の紅葉や鬱陶しい暑さの夏の木立の濃い影をみるたび、同時にマティスを見ている。セザンヌも、守一も。


晴れている間に、木材を整理し、小屋の中の掃除。畳一畳分の窓を四枚拭いて、壁に立てる。ばらしたカウンターも立て掛ける。もっと軽く、簡単に工作できるように設計しなおそう。窓のスライドをもっと滑らかにしようとノミで削る。隙間をどう埋めよう。あっという間に午後。


モカ200g焙煎。ダンパーがわりにアルミに穴をボツボツ開けて被せる。

まだ経験不足で火力の調整にとまどう。調整と言ったって、火との距離、豆の変化(色、香り、特に音)、振る速度くらいで再現性はげき低いわけ。焙煎の進行速度は火との距離を決定する。近すぎるとすぐ焦げる、遠いと水分が飛ばない。ハゼがくる時間に囚われすぎると大抵そのどっちかに傾く。

とはいえ、200gの量の手網の場合ダンパー機能はそれほど必要性を感じない、今回の焙煎でそう感じた。


帰ると鯛めしがちょうど炊けていた。鯛のアラを使うからとっで安く、美味しく食べる。そのあらで出汁をとったお吸い物と豆の煮物と。


コルタサル「石蹴り遊び」を読んで、飽きるとレリスの「幻のアフリカ」に戻る。途中でジョジョ鎌倉ものがたり。幻のアフリカが、滅法面白くなってきた。

自分が今いる世界とは全然違う(または、もうなくなった)基礎のうえに成り立っている人々の感覚が、自分のなかにもあるように思える。畏怖や信心、感情のスイッチがより原初のカタチでゴロンと見せられるのがたまんない。