5月10日

午後、曇りから小雨。

雨が止んだら、庭の手入れがしやすくなるな。

店の掃除のあと、メトロに借りっぱなしのDVDの返却のついでに、会期最終日の山本弘展に滑り込み。

見る前はデッサンに近い自画像、ビュッフェの模倣と思って逃してもいいかくらいで思ってた。結果として、行って本当に良かった。

限られた数の直線で三角形の顔を描いた自画像らしいもの、その数本の線が奥行を獲得し、身体のラインを形成し、たしかに荒くも繊細な感情がみてとれるようで、視線が揺らぐ。

寝そべる裸婦像の上半身を四角でサッと引いた線で描いたデッサンがあったけれど、あの大胆なデフォルメで、小学校の頃美術の授業でよく見なさい、身体のラインで直線のところなどどこにもないんだよ。だから、曲線で描きなさいと言われ真に受けた僕の直線に対する疑問は他の絵画でも直線のものはあったはずなのに、山本弘の直線によって、先生の言葉が溶けてなくなっちゃった。

大学の教授が、自然の色に黒などあるか。身体の影に黒をつかわずにしなさい、と英語だったけど確かにそういった、その黒を使ったマティスの風景画をみたあのときと同じ、ぶつからない衝撃で僕を塗り替えた、あれがあった。


そしたら木村さんがきて、もこなちゃんが来て、帰りが遅くなってしまった。帰ると優子さんが春巻を巻くところで手伝い、優子さんは森さんと飲みに出かけた。店で知久さんと話し、社会のこととか本当は話さない方がいい。そんなことは、言わなくて山本弘の話をしていたほうがなんぼかいいのに、頭が逃げているよう。帰りにいるかいないかと思って蔵にいくと、優子さんがいた。皆さん、迷惑かけてたらすみません。でも酔っ払った優子さんを見るのは嫌いではない。