5月8日
快晴、風はあいかわらず強い。朝は寒かった。
山の緑の濃淡がくすんで見えていた全体から今日突然はっきりしていることに気づいて、杉の深緑がいっそう深くなって落葉樹の若葉色との色の差がはっきりしている山はもう、まだ先にくるはずの夏も始まっている。そんな緑の濃淡に、昨日でなくて今日気づいたのは昨日までの山と違うのか、見えていなかったということか。
コーヒーを焙煎する。コロンビア・スプレモ。数回前から短い時間での焙煎を試している。杏仁のような酸味は短い焙煎時間のほうがはっきりあらわらてくる気がする。
それから、平安堂にいって原稿、全然進まない。保坂和志『未明の闘争』が最終回だった。どの連載のときを読んでも、売木の紅葉の山脈を前にしたときと同じ、南信濃の森を飛んだ猿の群れと同じ、感動の仕方で感動していた。衝動が、胸の肺上部あたりから膨らんで暴れた。
夜は暇。