10月21日

晴れ。霞がかって陽射しが空ぜんたいにばらけるせいで、やんわりと眩しい。虚空蔵の頂上から風越山まで色鮮やかに紅葉しているその全体も薄ぼんやり白んでいる。山が紅葉すると、毎年いつもマティスの絵を思い出す。僕は、マティスを観てはじめて色彩を観る喜びを知った気がする。だから、芸術より先に自然があるのではなく、芸術は自然に触れるのと同じ衝撃や密度を持っている。セザンヌもそうだった。他にもたくさん、そうだ。

昨日?コーヒーを淹れながら話した話の途中から僕は話さなかった、俳句の話から連想したまだ若かった熊谷守一が描いた激しい風に打ち付けられてしなる一本の木の絵は揺れているある一瞬を切り取った、と思った。でも本当はその先こそ僕は話したい、それから守一の絵は一日の時間を一枚のなかに描いた。そうとしか思えない色で空を塗った。