3月17日

晴れ。


図書館の勉強机を高校時代の知り合いが三人で本を開いて話をしているところに出くわすと、彼らが開いていたのは僕が挿絵を描いた本でその挿絵を指差して「間違ってるよ」という指の先には

「氷かき屋」

と書かれた看板のことで、それはかき氷のことだ。

図書館を出て、銀座(日本にはそれは沢山の銀座がある)の銀行に優子さんを追いかけて入ると、四階も吹き抜けたロビーは三段ほどの低い本棚が菱形にズラリと何列も並んでいて、その間に机が同じように並んでいる。その中の一冊を手に取ると、章のタイトルと数行空けて文章が書かれているが、何が書かれているのかはもう忘れてしまったけれど、文章の間あいだに数字が挟まっていて、

「   9太鼓の音が聞こえてくる。3

       遠くでこだまする咆哮を包んで6

     6」

といった感じの文章が緑色の半紙に印刷されている。優子さんは必死に何かを探しているようで、本棚から分厚い本を手にとって一心に読み耽る、それを観察する。黒のタンクトップの三人の屈強な男が何か算段をしてから、砂利を敷いた寺の庭のような庭の客車も連結した列車を雨の中、走らせ始める。全体に青暗い夕方から夜にかけての時間。列車の轍に雨水が溜まり、薄く紫がかった桃色(豚の肌みたいな桃色)に暗い青のなかでは見える雨合羽の帽子まで被って本に目を落としたままその轍の端っこに長靴で立っていたかと思うと、階下への急な階段を降りていくようにして、トン、トン、トン、と水溜りを中へと降りていった。