2月10日(2月9日のこと)

晴れ。


朝起きて半ば諦めてカーテンを開けると、夜半過ぎて勢いが弱まってしまった雪はあれからもなんとか踏ん張ってくれていたみたいで、それでも3cmほどは家の周りは積もっていて、風越山からアルプスの山々は珍しく全体が白くなったところに朝焼けに照って薄桃色に光っていて、思わず見呆けてしまうほど。

一日中快晴に恵まれていたけれど、風がすごく冷たい。雪もさらさらの粉雪で握っても、開くと指の形に凹んだだけですぐにホロホロと隙間からこぼれてしまう。


昨日、仕事終わりにアピタが閉店セールやっていて二人で立ち寄り、中の本屋コーナーで物色。昔から図書館が好きで、思い出してみると本を読んでいた記憶があまりない。読むことより本に囲まれているのが好きなんじゃないか、と今でも自分自身訝るほどで、タイトルを眺めて時折気になったものを手にとってパラっとめくって読んでみる。だいたいはじめは雑誌を見てから、小説の棚に移動、何冊か読んでいるうちにソワソワしてきて落ち着かない。呼吸が浅くなって、文字をおえなくなってくる。自分だったら、今書きたいものをどう書くだろう。そういえば、あの小説だとどんな風に書いてたっけ。全然思い出せない。

要するに、今まで読んだ小説が、全然記憶にないことでその小説を読めてない気になっていま目の前にあるものどころじゃないんじゃないか!なんて思っているのかもしれない。それですぐにでもその本を読みたくなって、もっと探ると、自分で書いて自分に読んだことを証明したくなるのだろう。そのまま写生する、もいうことではなく、自分が書くように書いて、それがそれまで読んだものを自分が読めたことの証になるように書きたい、ということで。

今目の前に並んでいる本の列は、その向こうに書き続けた時間と、さらにそれ以上に読んだ時間と本が控えていて圧倒されてしまって、しかし自分一人ではそれを背負(しょ)う時間はないのだから、新しく読むより振り返ってもっと血肉にしたいものをほんとうに穴があくくらい読み込みたい、あーどうしよう!

「これ買っていい?」と言ってニットの本を買ったのに、僕は何も買わずに帰るのだった。