読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

2月8日

7日、晴れ。

8日、朝雨、時折霙。


7日、午後から原さんに車を取りに行く。そのまま、コーヒーをもらって駄弁る。

原さんのお祖父さんの戦争の話。お祖父さんは、通信兵としてマレーシアで暗号傍受、平文への解読を担当していた。当時の話を聞いて、まだ小学生だった原さんは楽しそう、と感じるほどに穏やかな日常であった。向こうのバナナは甘くないんだぞ、日本語マレーシア語の会話。米軍通信兵との内緒の交信(「この通信、解読してるか。おまえ、なかなかやるな。」「そっちこそ。」「こちらはマラリアで腹が悲惨だよ。そっちはどうだ?」「こっちも、散々さ。」)

ただ一度、人を殺したことがある。それは彼が仲良くなった同世代の現地人だった。殴られ、杭に縛られたその男を、銃剣でひと突きにした。「お前になら仕方ない。ただ、苦しまないように頼む」と。


これを聞いて、小島信夫を思い出した。小島信夫もまた戦時中暗号解読の任を受け、満州にいた。「燕京大学部隊」のなかで、アメリカ兵との通信の場面もなかったか。処刑の話は、「小銃」を思い起こす。というか、そっくりだ。すぐにその二つの作品の入った「アメリカン・スクール」を持って、原さんに渡しに行く。

このまま「墓碑銘」、「寓話」を原さんに読ませようと企てている。


帰ってカレーを拵える。


8日、冬の雨はつまらない。雪は冬しか降らないんだから、冬ぐらい雪が降るもんだ。

中川からの帰り、国道左手の天竜川を越えて聳えている赤石山脈南アルプスの手前の小振りの山は黒々と濡れているその奥の山々はある高さから幕を下ろしたように白い雪が被っている。右手の河岸段丘と山との合いの子のような山は背から西陽を受けて温まり熱を放射するように、山全体から湯気があがり、その蒸気がまた西陽に当たり柔らかく輝いている。


帰って、天ぷらを揚げる。